男性更年期障害

原因

男性更年期障害は、加齢に伴うテストステロン（男性ホルモン）の減少によって引き起こされます。これは身体的、精神的、性機能などさまざまな症状を男性にもたらします。

主な原因

• テストステロンの低下：テストステロンは、20～30代でピークを迎え、40代以降徐々に減少します。テストステロンの低下によりホルモンバランスが崩れて症状が現れます。
• ストレスや生活習慣：過剰なストレス、喫煙、過度な飲酒、不規則な生活習慣が男性ホルモンの分泌をさらに悪化させます。
• 疾患：糖尿病、高血圧、メタボリックシンドロームなどの慢性疾患がテストステロン値の低下を加速します。
• 心理的要因：仕事の責任や家庭での役割変化がストレスを引き起こし、症状を悪化させることがあります。

診断

男性更年期障害の診断は、一般的には以下の手順で行われます。

①問診

• 症状の確認：身体的（疲労感、筋力低下）、精神的（うつ症状、不安感）、性的（性欲減退、勃起不全）など、多様な症状について詳しく確認します。
• 生活習慣：喫煙、飲酒、運動不足、ストレスの有無を確認します。

②自己評価スケール

• AMSスコア（Aging Male Symptomsスケール）：男性更年期障害の症状を評価する自己記入式の質問票を使用します。

③血液検査

• テストステロン値の測定 遊離テストステロン（FT）や総テストステロン値（TT）を測定して、低値の場合に男性更年期障害の可能性を疑います。
• 男性ホルモン値は参考になりますが、絶対的なものでもありません。診断に際しては男性ホルモン値を参考にしながら専門医が行います。

④除外診断

• 他の疾患（抑うつ症、不眠症、甲状腺異常など）が原因である可能性を排除します。

治療

男性更年期障害の治療は、ホルモン補充療法を中心に、ライフスタイルの改善や心理的サポートを組み合わせて行います。男性ホルモンの補充は最も重要な方法ですが、妊孕能に影響が出る可能性がありますので注意が必要です。

①ホルモン補充療法（HRT: Hormone Replacement Therapy）

• テストステロン補充療法 テストステロンを外部から補充し、ホルモンバランスを回復させます。
  方法：注射、ジェル、パッチなど。本邦では主に注射による治療が行われています。
  効果：性欲や活力の回復、筋力改善、気分安定をもたらす。
  注意点：前立腺がんや多血症のリスクがあるため、治療前後に定期的な検査が必要

②ライフスタイルの改善

• 運動 筋力トレーニングや有酸素運動が、テストステロン分泌を促進します。
• 食事 高タンパク、低脂肪の食事を心がける。亜鉛やビタミンDが含まれる食品が有効という報告もあります。
• 睡眠 質の良い睡眠を確保することで、ホルモン分泌が正常化されます。

③心理的サポート

• カウンセリング うつや不安が強い場合、専門家のサポートが有効です。
• ストレスマネジメント 瞑想やリラクゼーション法を取り入れることで症状が軽減する場合があります。

④補助療法

• 薬物療法 必要に応じて抗うつ薬や抗不安薬を処方。
• 漢方薬 更年期症状の緩和を目的に、八味地黄丸などの漢方薬が用いられることがあります。

治療の留意点

• テストステロン補充療法は、効果を感じるまでに数週間から数カ月かかることがあります。
• 治療は専門医（泌尿器科、内分泌科）の診察のもとで行う必要があります。
• 適切な治療を受けないと症状が悪化する可能性があるため、早めに相談することが重要です。

まとめ

男性更年期障害は、テストステロンの減少が主因ですが、生活習慣や心理的要因も関与します。症状に気づいたら、専門医の診察を受け、適切な診断と治療を進めることで、生活の質を大きく改善できます。